日別アーカイブ: 2026年7月17日

諏訪地質工業のよもやま話~地盤を読み解く~

皆さんこんにちは!

有限会社諏訪地質工業、更新担当の中西です!

 

~地盤を読み解く~

 

建物、道路、橋、トンネル、ダム、工場などを安全につくるためには、地上に見えている状況だけでなく、その下にある地盤の状態を正確に把握する必要があります。

土地の表面が平らで、見た目にはしっかりしているように感じられても、地下には軟らかい粘土層、地下水を多く含む砂質土、盛土、空洞、岩盤などが存在する可能性があります。

地盤の状態を確認しないまま工事を進めると、建物が傾く、道路が沈下する、掘削した斜面が崩れるといった問題につながりかねません⚠️

そこで重要な役割を担うのが地質調査業です。

地質調査業では、土地の成り立ちや地層の構成、土の硬さ、地下水の位置、岩盤の状態などを調べます。その結果は、建物の基礎形式や施工方法、災害対策などを決めるための重要な資料となります。

今回は、地質調査業の中心的な技術である現地踏査、ボーリング調査、試料採取などについてご紹介します。

地質調査は現地を観察することから始まる

地質調査では、いきなり機械を設置して穴を掘るわけではありません。まずは、調査対象となる土地や周辺環境を実際に確認します。

これを現地踏査と呼びます

現地踏査では、土地の傾斜、地形、露出している岩盤、湧水、ひび割れ、周辺の建物、擁壁、道路などを確認します。

たとえば、地面に不自然な段差や亀裂がある場合、過去に地盤が動いた可能性があります。斜面から水がしみ出していれば、地下水の流れが存在していることが考えられます。

周辺の住宅に傾きや外壁のひび割れが多く見られる場合は、軟弱地盤や不同沈下の影響を検討する必要があります。

また、土地の周囲に川や谷、崖、旧水田などがあるかも重要な情報です。

現在は住宅地になっていても、過去には河川や沼地だった場所があります。こうした土地では、軟らかい土や地下水の影響が残っていることがあります。

地質調査技術者は、現在の景色だけではなく、地形や周辺環境から土地の成り立ちを読み取ります

地形図や古い資料を確認する技術

現地踏査とあわせて、地形図、地質図、航空写真、過去の土地利用記録などを確認します。

古い地図を見ると、現在は埋め立てられている川や池、谷などが分かる場合があります。

山を削り、その土で谷を埋めて造成した土地では、切土部分と盛土部分で地盤の状態が異なります。境界付近に建物を建てると、沈下量の違いによって建物が傾く可能性があります。

また、過去に土砂災害や液状化、地すべりなどが発生した記録がないかも確認します

資料調査によって、現地で重点的に確認すべき場所を絞り込めます。

ただし、地図や資料だけで地下の状態を完全に判断することはできません。土地利用の変化や造成工事によって、過去とは状況が変わっていることもあります。

資料調査と現地確認を組み合わせ、地下の状態を予測することが大切です。

ボーリング調査で地下を直接確認する

地下の地層を詳しく調べる代表的な方法が、ボーリング調査です。

ボーリング調査では、専用の機械を使って地面に細い穴を掘り、地下の土や岩石を採取します️

掘削した深さごとに、土の種類、色、硬さ、水分量などを確認します。

地表から数メートルは盛土、その下に軟らかい粘土層、さらに深い場所に締まった砂層や岩盤が存在するなど、地下の構造を詳しく把握できます。

ボーリング調査で使用する機械は、調査場所や必要な深さに応じて選ばれます。

住宅地や狭い敷地では、小型のボーリング機械を使用することがあります。山間部や傾斜地では、機械を設置するための足場を組んだり、資材を人力や索道で運んだりする場合もあります。

大型構造物の調査では、数十メートルから百メートルを超える深さまで掘削することもあります。

単に深く穴を掘ればよいのではなく、地層を乱さず、安全に試料を採取する技術が必要です。

掘削状態から地質を判断する技術

ボーリング調査では、採取した土や岩石だけでなく、掘削中の機械の反応も重要な情報になります。

掘削速度が急に速くなった場合は、軟らかい地層や空洞へ到達した可能性があります。反対に、掘削抵抗が大きくなった場合は、硬い砂れき層や岩盤へ入ったことが考えられます。

機械から伝わる振動、音、掘削水の変化なども観察します

経験豊富な技術者は、ロッドを通して伝わる感触から、地層の変化を予測することがあります。

しかし、感覚だけで判断するのではなく、掘削深度や採取した試料、試験結果などと照らし合わせて確認します。

地質調査では、機械を操作する技術と、地下の状態を読み取る知識の両方が必要です。

標準貫入試験で地盤の硬さを調べる

ボーリング調査とあわせて行われる代表的な試験が、標準貫入試験です。

標準貫入試験では、地中に試験用の器具を打ち込み、一定の深さまで入れるために必要な打撃回数を測定します。

この打撃回数から得られる数値が、一般にN値と呼ばれます

N値が小さい地層は比較的軟らかく、大きい地層は硬いと判断するための参考になります。

砂質地盤では締まり具合、粘性土地盤では硬さを推定する資料として使われます。

建物の基礎をどの深さまで設置するか、杭をどの地層まで到達させるかを検討する際にも重要です。

ただし、N値だけで地盤の性質を完全に判断できるわけではありません。

同じN値でも、砂、粘土、れきでは性質が異なります。また、大きな石に器具が当たると、周囲の地盤より高い値が出る場合があります。

そのため、採取試料や地層構成、地下水などの情報と組み合わせて評価する必要があります。

土質試料を採取する技術

地下から採取した土は、地層の状態を直接確認できる貴重な資料です。

ボーリング調査では、深さごとに土を採取し、土質名、色、粒の大きさ、含水状態、におい、混入物などを確認します

土質試料には、大きく分けて乱した試料と乱さない試料があります。

乱した試料は、土の種類や粒度、含水比などを調べるために使用します。

一方、地盤が本来持っている強度や圧縮性を調べるためには、できるだけ自然の状態を保った乱さない試料が必要です。

軟らかい粘土を採取する際に、強い振動や衝撃を与えると、試料の構造が変わってしまいます。

そのため、専用のサンプラーを使い、ゆっくりと地中へ押し込んで採取します。

採取後も、乾燥や温度変化、振動を防ぐため、適切に密封し、慎重に試験室へ運びます

試料を正しく採取・保管できなければ、室内試験の結果も実際の地盤状態を反映しなくなります。

岩盤コアを採取する技術

トンネル、ダム、橋梁、発電所などの大型構造物では、岩盤の状態を詳しく調べる必要があります。

岩盤調査では、円筒状の岩石試料であるボーリングコアを採取します。

コアの色、硬さ、割れ目、風化の程度などを確認することで、地下の岩盤状態を把握します⛰️

岩盤が硬くても、割れ目が多ければ、水が通りやすかったり、掘削時に崩れやすかったりする可能性があります。

反対に、連続した健全な岩盤であれば、構造物を支える基礎として利用できる場合があります。

良好なコアを採取するには、岩盤の状態に合わせて掘削速度や水量、回転数などを調整する必要があります。

無理に速く掘削すると、コアが細かく割れ、元の岩盤状態を判断できなくなることがあります。

採取したコアは、深さの順番が分かるように専用の箱へ並べ、写真や記録を残します

コアの並べ方を間違えると、地下のどの位置に割れ目や軟弱部があったのか分からなくなるため、正確な管理が求められます。

地下水位を確認する

地質調査では、土や岩盤だけでなく、地下水の位置や動きも重要です。

地下水位が高い場所では、掘削中に水が流れ込んだり、建物の地下部分へ水圧がかかったりする可能性があります

砂質地盤に地下水が多く含まれている場合、地震時の液状化について検討する必要もあります。

ボーリング孔の水位を測定し、時間の経過による変化を確認します。

必要に応じて観測用の管を設置し、一定期間にわたって地下水位を記録することもあります。

雨の多い時期と乾燥した時期では、地下水位が変化する可能性があります。そのため、一度の測定結果だけでなく、季節や天候の影響も考慮します。

地下水の流れを詳しく調べる場合には、透水試験などを行います。

地下水の情報は、基礎設計、地下工事、斜面対策、止水計画などに欠かせません。

調査位置と高さを正確に管理する

地質調査の結果は、どこで、どの高さから調査したのかが明確でなければ活用できません。

同じ敷地内でも、位置によって地層構成が異なることがあります。

ボーリング位置が計画地点からずれていれば、設計に必要な地盤情報を得られない可能性があります。

そのため、測量機器や位置情報を利用し、調査地点の座標と標高を確認します

掘削深度も、地表から何メートルという情報だけでなく、標高として整理することがあります。

複数地点の調査結果を標高で比較することで、地層がどのようにつながっているかを判断しやすくなります。

現場での正確な位置管理は、後の地質断面図や解析の精度を支える重要な技術です。

周辺環境へ配慮した施工

地質調査では、ボーリング機械の音や振動、掘削水、資材運搬などが周辺へ影響する場合があります。

住宅地で調査する場合は、近隣住民への説明や作業時間への配慮が必要です

道路上で調査する場合には、車両や歩行者の安全を確保しなければなりません。

掘削によって出た泥水や土砂を適切に処理し、周囲へ流出させないことも重要です。

地下には、水道管、ガス管、電気ケーブル、通信線などが埋設されている可能性があります。

事前に図面や探査結果を確認し、地下埋設物を傷つけないように調査位置を決めます。

技術的に正確な調査を行うだけでなく、周辺の生活や環境へ配慮する姿勢も、地質調査業に求められます

現場作業を支える安全管理

ボーリング調査では、回転機械、高圧ホース、重量物などを扱います。

ロッドやケーシングなどの長い部材を持ち上げる作業では、挟まれや落下に注意が必要です。

機械の回転部分へ衣服や手袋が巻き込まれないよう、作業位置や服装を確認します

傾斜地や水辺で調査する場合には、足場の安定や転落防止対策も必要です。

山間部では、落石、斜面崩壊、天候の急変などにも注意します。

作業前には、調査手順、役割分担、危険箇所などを全員で確認します。

地盤を調べる仕事でありながら、調査する側が事故に遭っては意味がありません。

安全な作業環境を整え、確実に調査を完了することも、技術者の重要な責任です。

まとめ

地質調査業における現地調査・ボーリング技術は、目に見えない地下の状態を明らかにするための専門技術です。

現地踏査や資料調査によって土地の成り立ちを予測し、ボーリング調査によって土や岩盤を直接確認します。

さらに、標準貫入試験、試料採取、地下水位測定などを組み合わせ、地盤の硬さや性質を詳しく把握します

調査結果の精度は、機械性能だけで決まるものではありません。

掘削中の変化を読み取る力、試料を乱さずに採取する技術、位置や深度を正確に記録する姿勢が欠かせません。

地質調査は、建物が完成すると見えなくなる地盤を対象とした仕事です。

しかし、その見えない部分を正確に調べることが、構造物の安全性や災害対策を支えています。

地面の下に隠された情報を読み解き、安全な建設の第一歩をつくること。それが地質調査業における現地調査技術の大きな役割なのです️✨